2025.8.28
【海外和風庭園プロジェクト】中国煙台市に日本の美を再現|direct nagomiの挑戦

「大きな和風庭園を一緒につくってくれないか?場所は中国の烟台市なんだけど…」
代表・中島知の旧知の仲間からの一本の電話が、この挑戦の始まりでした。舞台は中国・烟台市。青島の近く、北朝鮮の対岸に位置する海岸都市です。その海沿いに建つリゾートマンションの14万㎡におよぶ敷地の一角、約5000㎡にわたり、巨大な滝を備えた和風庭園をつくってほしいという依頼でした。
施工は二度の渡航に分けて行われました。第一期は三段落ちの滝と池まわり、第二期は高さ7.2メートルの直下型の滝。使用する石は数トンから20トン規模まで、総量にして500トンを超える巨大なプロジェクトでした。
この記事では、その現場での工夫、言葉の壁、文化の違い、そして一年後の再訪で感じた「庭の成長」まで、海外造園のリアルを記録していきます。
こちらは第一期施工後の現地の様子です。

「和風庭園を海外でつくる」。
言葉にすると単純なことのようにも見えますが、ただものを輸出するようなシンプルなことではありませんでした。日本からは職人6名が参加し、現地の職人の方々も30名ほどが一斉に動くという大規模現場。現地の気候や植物・石などの特性の違いにも気を配る必要があり、職業習慣や文化の違いから思いもよらないようなトラブルにも何度も直面しました。

一期施工 ― 三段落ちの滝と池づくり

滝を形づくる「水の落ち方」の戦い
第一期での課題は、5〜6メートルの三段落ちの滝でした。構造としては、一段あたり2メートルほどの石を積み重ねれば形になります。しかし難しかったのは「水の表情」の調整でした。

滝の上から下へと水を落とす際、全段で美しく均等に流れる仕上がりを目指していました。そのため、各段の石ごとに水の落とし方を細かく調整する必要がありました。もし角度が1度でもずれれば片側に水量が偏ってしまい美しい風景には仕上がりません。ノミで石を削り、数メートルの幅にわたって5センチ単位で角度を調整。水を流しては止め、修正してまた流す。失敗できない工程を一つひとつ積み重ねていきました。

言葉の壁と、伝わらないニュアンス
現場での現地職人とのやり取りは通訳を介して行いましたが、ここにも苦労しました。たとえば上述したような水量の調整について通訳を介してでは伝えきれませんでした。

現地スタッフにとっても、この規模の滝を施工するのは初めての経験。仕上がりや水のイメージまで含めて説明するには、一度水を流して何がどうなっているのかを体験してもらい、具体的に良い・悪いを示しながら細かい変更を指示していく、という手法を採りました。互いに試行錯誤しながら、少しずつ理解を重ねていきました。
池まわりと植栽の工夫
今回の工事を通して、日本の庭園感覚と中国の嗜好の違いも色々と感じました。

たとえば滝の周囲や組んだ石の合間には、松を植えるスポットを確保。ラフターで7〜8メートル級の松を吊り込み、飛び石を配しました。現代の日本では手間がかかるため避けられがちな黒松も、中国では人気が高く、今も需要があるようです。

滝のある池周りの枯山水エリアには飛び石を配置。もし石の手配も任せていただいていたなら、もう少し大きさのバランスは整えたかったところです。
ここにも松を植えています。そもそも枯山水の流れの中に松を植えることも日本では珍しいですが、そこは文化の違い、ですね。

二期施工 ― 高さ7.2メートルの直瀑

日本では不可能なスケール
二期目の施工は、7.2メートルの直瀑(ちょくばく)。高さだけでなく、積み上げる石は最大20トン級。日本では施工場所も条件も揃わず、まず実現できないスケールでした。

足場も段取りもない状態から
現場の段取りは日本ほど整っていません。足場は十分ではなく、初日と二日目は石選びと段取りに追われほとんど終わり。三日目からようやく動き出せました。

私たちが現地に到着したタイミングではまだ石の手配が終わっておらず、まず石の買い付けからスタート。片道3時間かけて山へ選定に行き、現場に届くまで2日を要しました。600トン吊りのラフターで石を吊り上げ、御影石を一段ずつ組み上げていく。もし落とせば、下の地下駐車場を突き抜けかねない緊張感。

現地スタッフにとっては未知の工事であったため、イチから指示を出す必要がありました。それでも彼らの協力なくしては成立しなかった現場。「経験の共有」という意味では、日中双方にとって大きな財産になったと言えるかと思います。

1トンの石が小さいと感じたのは初めてでした。
最後に植えた一本の松
直瀑の完成後、石組みの間に松を植えて仕上げました。水と石と緑が一体となり、巨大な庭園空間の施工を終えました。

実際に水が流れている姿を見る日が待ち遠しいです。
今後への広がりとお客様への価値
今回の挑戦は、direct nagomiにとって単なる一つの仕事以上の意味を生み出せたように思います。

中国の現場ならではの経験
たとえば、日本では経験できないような施工を経験することができました。
水の難しさ:水量の調整によって表情が変わる。石を削り、水を流して確認する。その繰り返しこそが生きた水を扱う本質。
石材のスケール感:数トンを大きいと感じていた日本での感覚が、20トン級の石たちを前にして一変しました。
植栽文化の違い:黒松の需要や、庭での配置の仕方。日本と中国の文化差による美の基準のちがいを肌で感じられました。
お客様へ届けられる価値は?
日本国内のお客様にとっても、この経験を還元していきたいと思っています。スケールの大小に関わらず、自然と人が調和する庭を形にしていく。そのための糧を、中国で得ることができました。
規模の壁を超えた経験:巨大石、水量調整、異文化施工。国内では得られない経験値が、技術の幅を広げてくれました。
柔軟性と応用力:予測のつかない現場で培った臨機応変な対応力は、日本の住宅庭園やリフォーム案件にも必ず活かせると思います。
安心感と信頼:どれだけ環境や条件が異なっても、direct nagomiとしてのこだわりを貫く姿勢。これは規模の大小に関わらず、お客様に還元できる価値だと信じています。

海外で和風庭園を検討中の方へ|対応可能なエリアとご相談体制
中国・煙台市での施工は、direct nagomiにとって大きな挑戦であり、学びでした。滝を流れる一滴の水、20トンの石の重み、現場での言葉の壁。すべてが、庭をつくるという営みの本質を改めて問い直す経験になりました。
direct nagomiでは、以下のような海外案件に対応可能です。
アジア圏(中国、台湾、シンガポール、ベトナム等)での和風庭園設計・施工
現地施工チームとの設計連携、施工指導
長期的な維持管理を見据えた提案

小規模な庭から大規模商業施設の景観設計まで、お気軽にご相談ください。
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